米国でエボラ出血熱「補償外」の保険会社が増加、日本の保険会社は?
2014/11/05
☆広がるリスク
西アフリカでのパンデミックは、欧州や北米に飛び火し、10月28日付の外務省「海外安全ホームページ」によると、西アフリカ3カ国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)でのエボラ出血熱症例は、10月25日付のWHOレポートで、死者4,913人、感染者数10,115人に上ると発表された。スペインやアメリカの医療関係者の二次感染も報告されている。ウイルス感染者が潜伏期間を保ったまま、国外に流出することで二次感染が広がるリスクがある。現段階で治療法が限定的なので、感染リスクを食い止める手立ても限定的です。
☆感染者の衝撃的な治療金額
各国政府当局の対策が報道される中、米国のシカゴ・トリビューン紙が、10月7日、一患者の治療費に焦点を当てた衝撃的なレポートを掲載しました。
アメリカ初のエボラ出血熱発症者となった、トーマス・ダンカン氏は、テキサス州ダラスで9月28日に隔離治療を開始、10月8日に終了しました。治療内容は、人工呼吸器、試験薬投与、腎臓透析から、流体交換、輸血、そして血圧維持薬までと幅広く、さらにエボラ汚染廃棄物処理、看護婦を安全防備するための機器と、そのセキュリティなどにも及んだ。ワシントンの保険コンサルティング会社の最高経営責任者のダン・メンデルセン氏が、その治療費用を推定したところ、金額は1時間に1,000ドル、1日当たり18,000ドル(約205万円)に上った。そして、たった10日間の治療総額は、50万ドル(約5,700万円)に達しました。
☆保険会社が「正常」なら、免責条項
10月22日、ロイターは、英米の保険会社はリスク回避として、エボラ出血熱を普通保険約款の適用除外としたと報じました。
米国保険大手エースは、10月22日、企業契約で加入している従業員向けの保険について、ケースバイケースで、補償範囲からエボラ出血熱を除外していると発表。これに追随するかのように、急遽、約款改正を行う保険会社が続出しています。
東京海上日動火災保険では、エボラ出血熱での治療や死亡でも、海外旅行傷害保険の適用範囲と約款に提示しております。ただし、帰国日を含め30日以内の場合に限りますが、これは他の日本の損害保険会社でも同様であり、現時点では、日本には、免責事項に移行しようとする保険会社はありません。
ここに、日本と英米の保険会社の違いをよく知ることができます。健康保険制度が根底にある日本では、補償外とはならないのに対し、アメリカは自由診療の国であり、民間の保険や組合健康保険、あるいはキリスト教徒の慈善保険などに加入していなければ、医療費が捻出できずに治療が受けられない可能性が高いのです。
日本の場合、生損保ともに、たとえ免責条項があったとしても、適用せず保険金の支払いを行うケースが多い。10月3日、生命保険協会は、「噴火による死亡、怪我」は免責条項としてあるにも関わらず、御嶽山噴火火山関連の保険金支払いを宣言しました。
日本の保険業界は、度重なる震災やパンデミックに対応することでしょう。日本の保険政策には、厚生労働省、金融庁、財務省などが携わっていて、保険業界は様々な監視体制が整っているので、心配ありません。